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社長メッセージ

「視える化」「言える化」「聴ける化」を実践して新たな挑戦を繰り返し、
カーボンニュートラル時代のエッセンシャル・プレーヤーであり続けます

代表取締役社長 兼 COO 大沢 伸朗

代表取締役社長 兼 COO大沢 伸朗

Nobuaki Osawa

社会課題に直面するお客様に、高いレベルの総合力で製品・サービスをお届けします

オーエスジーグループにとって、2024年11月期は非常に厳しい事業環境でした。自動車産業で国内メーカーの認証不正問題が明らかになり、世界的なEV化への流れに一服感が見られたことなどが生産に影響を与えました。中華圏の景気は2023年以降低迷が続き、ようやく回復の兆しが見え始めたところです。市況の回復が予想よりも遅れたため、2024年11月期の業績は前期比で増収となったものの、世界的なインフレによる人件費やエネルギー、材料費などの増加を吸収するまでには及ばず減益となりました。次の中期経営計画「Beyond the Limit 2027 Stage2」に向けて、課題を克服するための具体的な対策を講じ、決意を新たに2025年11月期を迎えています。

オーエスジーグループは、総合切削工具メーカーであり、多岐にわたる分野で世界のモノづくり産業の土台を支えています。技術が日々、進歩・進化する中で、必要とされる切削工具も変化しています。私たちはそのような時代とともに変化するニーズをいち早くキャッチし、スピード感を持ってお客様に製品・サービスを提供し続けることで、常にお客様から必要とされるメーカーであり続けたいです。また常識を覆すような社会変化が次々と起こる今の時代では、さらにお客様の期待以上の製品・サービスを提案することが目指すべき姿だと考えています。モノづくりの生産現場においては、労働人口の減少によって自動化が進み、またカーボンニュートラルをはじめとする環境配慮への対応も必要になります。オーエスジーグループは、製品である切削工具を通して、それらの社会課題の解決を目指しています。高品質で耐久性の高い切削工具は、工具コストや段取り時間を削減し、生産性を向上させます。また加工時間も短縮できることから、消費電力を削減してカーボンニュートラルに貢献します。オーエスジーグループにとって環境への配慮は、新たに意識しはじめたものではありません。1996年に、先代の会長である大沢輝秀が「環境にやさしい会社」を宣言し、グループ経営の基礎のひとつとなりました。現代社会では、カーボンニュートラルという概念が一般的になりましたが、オーエスジーグループでは、そのような言葉がなかった時代から環境への意識を高く持って事業を行い、その方向性はぶれることなく続いています。また「地球会社」という企業理念が示す通り、オーエスジーグループは、世界33カ国に進出し、トップシェアやポジションを確立して世界中のモノづくりを支え、いまや売上の7割近くが海外市場で生み出されています。その要因は、各地域で異なるニーズや課題をくみ取り、しっかりと咀嚼し解となる製品・サービスを提案しているからにほかなりません。品質、性能、納期対応などを高いレベルで総合的に提供していることが強みです。またお客様に誠実に向き合い、まじめに応え続けることで信頼を得てきました。国内外で発揮してきたこうした強みを、創業来長きにわたって脈々と受け継いできたことが、総合切削工具のグローバル企業としてトップクラスに位置する現在につながっていると思っています。

「ツールコミュニケーション」を強みに、選ばれ続ける企業を目指します

オーエスジーグループは、長期ビジョン「カーボンニュートラル時代に向けて世界のモノづくり産業に貢献するエッセンシャル・プレイヤーへ」を掲げ、2030年までにその姿を確立するため、中期経営計画「Beyond the Limit」を遂行しています。すでにエッセンシャル・プレイヤーとして役割を果たしているという声をいただくこともありますが、社会構造や価値観が大きく変化している今、現状が続く保証はなく、今後のモノづくりがどう変わっていくのか正確に見極めることも困難です。だからこそ、自分たちでありたい姿を明確に描き、ぶれずに目指していくことが必要だと考え、長期ビジョンを策定しました。モノづくり産業はこれから想像もできないほどの変化が起き、生成AIやロボティクスによって人の手を借りないプロセスの導入がどんどん進んでいくでしょう。とは言え、形を変える"加工"という工程がなくなることはありません。オーエスジーグループが将来にわたって選ばれ続けられるため、変化する時代の要請にお客様が応えられるよう工具の提供にとどまらず必要なソリューションに磨きをかけ続けていきたいと考えています。これは、今に始まった考えではなく、オーエスジーグループは、1990年代から「ツールコミュニケーション」というアプローチでお客様と接してきました。切削工具(ツール)を通じてお客様とコミュニケーションを図るというもので、単に製品を提供するのではなく、お客様のニーズや課題を理解し、それに応じたソリューションを提供することを意味します。このアプローチに必要なのは、「技術力」「対応力」「提案力」「創造力」です。高品質で高性能な製品をつくり出す確かな「技術力」、真摯な姿勢で粘り強く顧客ニーズに応える「対応力」、期待の先を行く「提案力」と「創造力」。4つの力を社会の変化に合わせてアップデートし、ソリューション力を高めることで、変わりゆく時代のエッセンシャル・プレイヤーであり続けたいと考えています。

人財の視える化を進め、若手からシニアまでいきいきと働ける場を提供します

企業に成長をもたらすのは言うまでもなく人財ですが、デジタル化や生成AIによる社会変化を捉えた時に、世の中の進歩と並走できる人財、先を行く人財をどれだけ確保できるかが非常に重要です。人口減少も歯止めがかからず労働人口が減る厳しい環境の中、今以上のパフォーマンスを企業として示し続けるために人財戦略をどう展開していくのか。オーエスジーの人財を年齢区分で分布すると30代から下の世代は層が薄くなっており、非常に危機感を持っています。10年後、20年後は今よりも少ない人員で会社の成長を実現しなくてはならず、Z世代と呼ばれる若者たちが社会の中心になる時代はもう目の前です。価値観が理解できないなどと頭を抱えている時間はありません。価値観の異なる世代がオーエスジーでの仕事はおもしろいと感じ、会社を切り盛りしてくれる人財となるよう仕組みや環境を整え、やりがいを持って働いてくれる人財を一人でも多く増やしていくことが重要です。近い将来、オーエスジーグループの中核となる層に対して、計画的に育成していくプログラムを構築するとともに、それぞれが活躍できる場所をイメージして適材適所の人員配置を実現していきたい考えです。

オーエスジーでは、2023年12月、経営資源の有効活用を目指し、「リソースマネージメントセンター」という組織を作り、部門再編しました。最も課題だと感じている「人財の活用」を進めるため、従業員のスキルや能力を可視化する「人財データプラットフォーム」の構築を始め、これまでの枠にとらわれない次世代リーダーの教育や、果敢に挑戦できるマインドを持つ人財の育成を行っていく必要があります。人財の視える化やリスキリングを図ることで若手からシニアまで従業員がいきいきと働ける場を広く提供していきます。

従業員が能力を十分に発揮し活躍するには、企業の土台となる組織風土が大きく影響します。中期経営計画は、今までの常識に囚われず、自分に限界を設けず、自らの殻を破ることに挑戦する、という思いを込め「Beyond the Limit」をタイトルにしました。マンネリズムから脱却し、新しいことを生み出すためにチャレンジしていこう、と社内に訴えています。それを実現する時に必要なのは、ものごとの可視化つまり「視える化」することや上下関係を問わずお互いが「言える化」「聴ける化」を実践することです。特に「聴ける化」は、上に立つものに求められる能力で、話を聴くことができるリーダーのもとでは、言う文化も育まれます。私は常々、この3つを口頭で伝えていますが、文字にした時も意図が正確に伝わるよう漢字表記も工夫しています。オーエスジーで働くすべての従業員が「視える化」「言える化」「聴ける化」を実践し、適材適所で能力を発揮して、中期経営計画の完遂を目指します。

中期経営計画Stage2では、収益性、成長性、資本効率を重視し、経営基盤の強化を図ります

中期経営計画 Stage1(以下、前中計)は最終年度、増収ながらも利益面に課題を残し、中期経営計画 Stage2(以下、現中計)に移行しました。前中計では海外の売上高比率が68%と、右肩上がりで伸長しており、為替の影響も反映し売上高は過去最高となりました。地域ごとにみても、日本、米州、欧州・アフリカ、アジアでバランスよく売り上げており、一極集中していない点が強みとなっています。しかしながら、グローバルでのコスト増を吸収することができず、前中計で目指していた収益性や事業効率の改善目標値には至りませんでした。営業利益率については、コロナ禍以後、下降傾向が続いているため、株式市場からは収益面において成長性に疑問符が付けられていると認識しており、危機感を持って現中計のStage2に臨んでいます。

不採算の製品・部門の見直し、事業効率を考えたオペレーションの最適化などを着実に行っていくと同時に、Aブランド製品のさらなる伸長が利益に貢献していくと考え、開発・販売に注力していきます。Aブランドは、進化した性能を標準品に加えた製品ブランドとして2015年に発表したものです。タップからドリルやエンドミルなどへもラインナップを拡充してきました。前中計では、景況が良くない中でも想定を超えるスピードで売上が拡大したため、標準品の売上高におけるAブランド比率の目標値を上方修正した経緯があります。現中計では、新製品の投入を積極的に進めるとともに、既存製品については、性能が陳腐化しないようアップグレードを図り、現在のAブランド売上高比率31%を2027年度までに40%に高める方針です。

オーエスジーグループでは、顧客産業別ポートフォリオの再構築も進めています。特に微細・精密加工向け工具については今後の成長が期待できる分野で、半導体、5G産業、ロボット・自動化、医療産業などへの販路開拓をさらに進め、収益を大きく押し上げる動力にしていきたい考えです。オーエスジーでは、2023年12月、約60年ぶりに営業体制を刷新しました。新たな業種へ新規開拓を進めるにあたり、営業部内で縦軸、横軸を通し、スピード感を持って組織を機能させることを目的にしました。体制がこれまでと大きく変わった現状で、メンバーには、新たな意識を持って行動し、挑戦していくことを期待しています。

現中計では、主力事業のタップを世界シェア30%強から40%まで引き上げることや、微細・精密加工関連の販路開拓と売上比率の拡大を目指しています。オーエスジーグループの強みである供給力を存分に発揮するため先行投資もしています。ただ、充実した設備をフル活用するほど市況が回復していないのが現状です。タップや微細・精密加工分野には十分なボリュームゾーンがあります。微細・精密加工の領域では、今後多くの部品が生まれ、より小さく、軽量な製品が多様な素材から作りだされていくでしょう。オーエスジーグループの供給力を武器に、ボリュームゾーンのある領域に攻勢をかけていきます。

収益性の向上に引き続き取り組んでいく現中計では、営業利益率16%超、ROE10%超を新たな経営指標として加えました。これは営業利益率が17‐18%程度であったコロナ禍以前の収益性を目指す決意表明です。また、オーエスジーのPBRは年々低下し、現状1倍以下で推移しています。資本を効率よく使用し、投資もして利益を生み出すことが必要となっており、現中計で掲げる経営指標をはじめ、財務資本政策を着実に実行し、企業として求められるレベルの数値を出して、株主や市場関係者の皆様の期待に応えていきたい考えです。

それには、オーエスジーグループ全従業員が一丸となって現中計に取り組まなければなりません。管理職だけが孤軍奮闘しても大きな成果にはつながらず、売上の70%近くを海外で生み出しているオーエスジーグループでは、現地のいちメンバーに至るまで現中計をどれだけ理解し、日々の業務で実践できているかが肝となります。各地域の幹部には、定例で行う会議の際、顔を突き合わせて説明し、計画に沿った予算編成も求めるため、現中計の浸透に問題を感じることはありません。しかし、グループ全従業員レベルで浸透を図り、個々が自分事として取り組むには、工夫が必要だと感じています。そうした意味では、目標を共有し、一人ひとりが何をすべきか理解し、活動するROICマネジメントのような考え方を導入することは有効かもしれません。

オーエスジーグループのDNAを着実に経営に生かし、変革した姿で未来をつくっていきます

オーエスジーグループの企業理念である「地球会社」は、1968年にアメリカを皮切りにグローバル展開を始めた際、我々が世界中のモノづくり産業を支える会社になることの決意を示したものです。日本経済のバブルが崩壊した1990年代には、当時社長であった大沢輝秀前会長が「出稼ぎ地球会社」というキャッチフレーズのもと海外展開を強化していき、その時にオーエスジーグループの確固たるDNAが形成されました。大沢前会長には持論があり、バブル崩壊後の景気低迷や人口減少が進む日本において、国内事業に頼っていては成長し続けることはできない、と考えていました。そこで、中国をはじめとするアジアやインドなど人口増加が見込めるマーケットに焦点をあて積極的にビジネス展開していくことを決めました。大沢前会長は、地球が我々のフィールドだという意識を企業理念に込め、グローバル企業ではなく「出稼ぎ地球会社」と表現し、「チャンバラができる人財がオーエスジーで活躍できる人財」だと社員たちに訴えました。馴染みのない地に行って見聞きし、スピード感を持って現地で経営判断する。こうした挑戦する力、戦う力を社員に求めました。真剣に相手と向き合い仕事をする姿勢、意気込みがオーエスジーの未来をつくっていく、と考えたのだと思います。挑戦し、スピード感を持って判断していく力は、いまやDNAとなってオーエスジーグループを支えています。

現在、長期ビジョンを達成するために「Beyond the Limit」を進め、現状クリアすべき課題も明確になっています。ただ、施策の方向性に間違いがなくとも、成果が見えなくては、株式市場や株主をはじめとするステークホルダーの皆様から十分な評価は得られません。私の役割は、歴代の経営者や従業員によって紡がれてきたオーエスジーグループのDNAを着実に経営に生かし、数値という形で示すことだと改めて認識しています。

代表取締役社長 兼 COO 大沢 伸朗 「Beyond the Limit」に私が込めた思いは、今までの常識に囚われず、自分に限界を設けず、自らの殻を破ることに挑戦することを原動力にして、役員、従業員がこれまでの"当たり前"を見つめなおし、進んでいくことです。ステークホルダーの皆様には、挑戦するオーエスジーグループに引き続きご支援を賜りたくお願い申し上げます。